2013/03/21

Large boulders and pedestals on uplifted coastal terraces in Kikai Island, southwestern Japan / 喜界島,海岸段丘面上の巨礫と台座岩


Large boulders and pedestals on uplifted coastal terraces in Kikai Island, southwestern Japan / 喜界島,海岸段丘面上の巨礫と台座岩

   Kikai Island (Kikaijima) is famous for the modern coral reef studies undersea. However, the ancient coral reef, which currently composes coastal rocky landforms, is also another important topic for geomorphologists.
   Numerous large limestone boulders, coming either from ocean as tsunami deposits or from mountain-side cliffs as fallen block, are distributed upon the coral-limestone surface of uplifted coastal terraces in eastern Kikai Island. Being fixed on the uplifted surface, the boulders act as "umbrella" to save the bedrock limestone beneath them from dissolution by raindrop. The surface of the terraces broadly lowers due to the rainfall-induced dissolution, and the protected portions beneath the boulders remains as pedestal.
   The boulders in the picture are located on relatively young surface of uplifted coastal terrace, whose duration of dissolution is approximately 1,500 years. Small pedestals with a height of several tens of centimeters, as well as dissolution pits on the surrounding terrace surface, are being formed . Higher pedestals, often exceeds 1 m at 6,000 years after emergence, are observed on higher terraces inland. The pedestals therefore allow us to obtain the surface lowering rate of the uplifted coastal terraces, which means the dissolution rate of the coral-reef limestone in Kikai Island. (See also the report by Hayakawa et al. in thisissue)


 サンゴ礁石灰岩からなる喜界島の完新世海成段丘面上には,同じくサンゴ礁石灰岩からなる巨礫が多く転がっている。津波で打ち上げられたか,あるいは陸側の段丘崖から落ちてきたか――いずれにせよ,定置かつ離水してから後,巨礫は「傘」となって,直下の基盤岩に雨滴との接触の機会を失わせる。一方,雨に晒された周りの地表面は次第に溶解し,その高度を減じていく。雨宿りの結果取り残された基盤岩は,巨礫を支える台座岩(ペデスタル)として現前する。
 写真は喜界島東岸の比較的新しい離水面に載る巨礫で,台座岩の形成が始まってから約1500年とまだ時間が浅い。そのため「台座」と呼ぶには未熟かもしれないが,周辺の溶食凹地とともに,巨礫の下部には数10 cm程度の台座岩が形成されつつあるのが見える。陸側の,より高く隆起した段丘面では,古いものほど台座岩は高く,たとえば6000年前の離水面でのそれは2 m近くにも及ぶ。喜界島における地表面の低下速度,すなわち石灰岩の溶解速度は,こうした台座岩の高さとその溶解継続時間とから求めることができる。
 なお,撮影地の背後には,サンゴの石垣で有名な阿伝集落がある。また,一段高い段丘面に載る別の巨礫と台座岩がある末吉神社も近い(本号掲載論文参照)。(2009年1月撮影)


(表紙写真:地形30 (3), 2009) 

Large boulders and pedestals on uplifted coastal terraces in Kikai Island, southwestern Japan / 喜界島,海岸段丘面上の巨礫と台座岩
(百之台から撮影地近辺を望む)



2013/01/30

Uplifted shore platform and cyclone-derived debris flow deposits, northeastern coast of the Arabian Peninsula, Sultanate of Oman / アラビア半島北東海岸(オマーン国)の隆起ベンチとサイクロンによる砂礫堆積物

Uplifted shore platform and cyclone-derived debris flow deposits, northeastern coast of the Arabian Peninsula, Sultanate of Oman / アラビア半島北東海岸(オマーン国)の隆起ベンチとサイクロンによる砂礫堆積物
Location: Uplifted shore platform and cyclone-derived debris flow deposits, northeastern coast of the Arabian Peninsula, Sultanate of Oman / アラビア半島北東海岸(オマーン国)の隆起ベンチとサイクロンによる砂礫堆積物

   On June 6, 2007, a gigantic cyclone “Gonu” attacked eastern Oman, the northeastern Arabian Peninsula. The cyclone attack caused flash floods in wadi channels in the dry region, entraining vast amount of sand and gravel which instantaneously traveled throughout the channels. Coastal deposits of the sand and gravel spread around the wadi outlets (left side in the photo), and such numerous gravels associated with repeated storms might have been trapped into coral reefs to form gravel-rich carbonate rocks (or, calcareous conglomerate) shown in the bottom of the photo. The uplifted shore platform has a 3-m height at its edge with sharp and deep notches, and partially with fallen blocks induced by wave and gravity forces (right-top in the photo), which are rapidly broken toward small pieces. A shell midden site (BIMMA-1) at the Neolithic to Bronze Age is on the uplifted platform. The platform cliff, as well as the midden itself, has therefore suffered from erosion for thousands of years. Together with this uplifted shore platform, several coastal terraces with heights of 100 to 500 m are formed in the backyard, indicating the active tectonics in this region. Furthermore, the Oman ophiolite, the largest, most famous and complete ophiolite in the world, forms high mountains with altitudes of 2,000–3,000 m in the inland areas along the coast.

 2007年6月6日,アラビア海(インド洋)で発生した大型サイクロン「ゴヌ」が北上を続け,オマーン湾とその周辺諸国を襲った。観測史上最大級のこのサイクロンは,オマーンの乾燥した大地に強風と豪雨をもたらし,普段は水の枯れたワディにも大量の水が流れ込んだ。激流は河床に溜まっていた砂礫を巻き込み,河口まで一気に運び出す。表紙写真の左側にみえる堆積物は,その際にワディから運び出された砂礫堆である。足元のサンゴを含む石灰岩にも礫が多く混入しており,この場所で大量の砂礫が繰り返し供給されていることを示している。右側と手前に張り出しているのは,高さ約3 m の隆起ベンチである。海側小崖の基部には鋭いノッチが発達し,写真右側の奥には波と重力とに耐えきれず崩落したブロックもみられる。この隆起ベンチ上には新石器後半から青銅器時代(およそ4-6千年前)の貝塚が分布し,少なくとも数千年間,ベンチの端は波の侵食を受けている。一度崩落したブロックは波の作用により急速に解体され,隆起ベンチ上には細かく打ち砕かれたブロックの破片が散在している。この写真の背後には数段の海岸段丘(標高100-500 m)が発達し,アラビア海沿岸域における地殻変動の歴史を物語っている。より内陸側には,かつてのテチス海の海洋地殻が標高2,000-3,000 m級の山脈を形成するほど持ちあげられ,世界で最も大規模かつ完全なオフィオライト,オマーンオフィオライトとして広く分布している。(2008年3月撮影)

(表紙写真:地形30 (2), 2009

2012/12/31

Goro Falls in southern Aso caldera foothill / 阿蘇外輪山南麓,五老ヶ滝

Goro Falls in southern Aso caldera foothill / 阿蘇外輪山南麓,五老ヶ滝
   Goro Falls, 44 m in height and 12 m in width, is one of the numerous waterfalls formed in extensive ignimbrite plateaus around the Aso caldera, central Kyushu. Recession of the waterfall has caused dissection of the welded ignimbrites, forming deep gorges below the waterfall. Spectacular features of joints in the Aso-1 ignimbrite, which is the oldest (ca. 270 ka) among the four major Aso ignimbrites, are clearly seen on the cliffs around the waterfall. The base of the ignimbrite is at 8 m above plunge pool, indicating that fluvial gravel layer beneath the ignimbrite has been eroded together.

 阿蘇火山は,世界有数の大規模なカルデラ火山である.カルデラの周囲には大量の火砕流堆積物が広く分布し,その溶結部では滝が多く形成されている.五老ヶ滝は,約27万年前に噴出したAso-1火砕流堆積物にかかり,形成当初の地点から現在の位置まで,峡谷を下流に残しながら後退してきた.高さ約44 m,幅約12 m(実測値).下流の谷底からは,柱状節理を呈する溶結凝灰岩の断面がよく見える.崖の基部,滝壷の水面から約8 mの高さまではAso-1の基盤をなす礫層であり,滝より下流では,火砕流堆積物の溶結部だけでなく基盤にまで侵食が及んでいることがわかる.

(表紙写真:地形 26 (3), 2005

> 地形図

2011/06/03

東京で一番高いビルの足下には - landform below the tallest building in Tokyo

密集する建物や舗装された道路に隠されるも、都市部の地形は、注意深く観察すればその足下に「ある」ことがわかる。

2007年に開業した東京ミッドタウン。ここには東京で一番高いビル、ミッドタウン・タワーがある。

地形(標高段彩+陰影+斜面傾斜の色づけ)を地図に重ねて見ると、六本木の周辺は、複雑に谷が入り組んでいる場所だというのがわかると思う。
数ある谷のうちの一つ、北東向きの小さな谷の谷頭部にミッドタウンは位置している。つまり、台地の尾根と谷との境目だ。だから谷に面している北側には、地下1階でも地に面した出口がある。
そしてその先には、昔の湧き水の名残である池があり、かつてはここが小川の始まりとなっていた。

ちなみに六本木ヒルズも同様で、南東向きの谷の頭部にあり、その谷側には池もある。
その名の通り、ヒルズは丘の上(ぎりぎり)に立っている。

さて、ミッドタウンを入り口から見て行こう。
ミッドタウンの正面。よく見ると、地面がこのあたりで道路側に傾斜し始めている。分水界のようになっているのだ。
ここからまっすぐ、1階を進む。


途中の商業施設は通過して、そのまままっすぐ行くと、渡り廊下に出る。横にはリッツカールトンのエントランス(「地下1階」だが、ここではもう地下ではない)が見える。


渡り廊下の突き当たりの先には、檜町(ひのきちょう)公園が見える。


ミッドタウン北東の檜町公園は、谷の始まりである。谷底は地面が低くなっているのと、高い建物が少ないために、視界が開ける。


渡り廊下から地面に降り、公園に入る。振り返ると、ミッドタウン・タワーの足下から水が湧き出しているのが見える。


公園内はよく整備され、水も豊富に流れている。ただし、この水はもともとの湧水ではなく、浄化した水を循環させているようだ。(都市化のために、東京都区部の湧水はどこもかなり少なくなっている。ここも水に触れてみると暖かく、自然の湧水そのものでないことはすぐに分かる。)


整備された空間ではあるが、水が流れているというだけでも雰囲気は感じられる。


池の先には東屋もあり、憩いの場となっている。
もともとは武家屋敷の敷地で、当時から池は作られていたのだろう。
ともあれ、大商業施設のすぐ裏にこのような公園があるというのも、東京の魅力のひとつではないだろうか。

谷はこの先も続き、かつては新橋の方へ流れる川があった。
現在そういった川は、埋められたり、道路や建物に置き換わって、その跡をみつけるのは容易ではない。
しかし、谷という地形は変わらずに残っている。

東京一高いビルの足下は、小さな川の始まる場所だったのだ。


2010/09/08

上から下まで - alluvial cone near Bergün, the Swiss Alps


alluvial cone near Bergün, the Swiss Alps

水や、石ころなど、地表の物質というものは、放っておけば高いところから低いところへと落ちてゆく。

スイスの山はおおむね、大昔に海底だったところが隆起してできたものであるが、ただ盛り上がったというだけではない。
地盤が隆起すれば、常にそれに逆らい、山を低くしようとする力もはたらく。これを侵食という。
山の頂上はそれ故、高くなったり低くなったりを繰り返している。
そして崩れた岩盤は、石ころとなり、砂となり、流され、やがて定置する。

山の上から削られ流されてきた石や泥の塊が、谷底で積み重なっている。
山の地形は動的に変化しているのだ。

2009/08/06

氷の力と水の力と - Silvaplana, Switzerland


かつて存在した巨大な氷河は山を覆い、谷を広く、また深く削り込んだ。
やがて間氷期という温暖期に入り、氷は融けてU字の深い谷が露わになる。
U字谷の谷底には水が溜まり、湖となる。

氷河が消えた後、U字谷に流れ込む支流の河川は、鋸のように岩を侵食した。
川の出口には上流から河川で運ばれた砂礫により扇状地が形成され、この場所のように湖に流れ込む箇所ではファンデルタと呼ぶ。


その直上には、深く削り込まれた細い谷がある。
この谷の中は急流となっており、時に滝となって、強力に岩盤を削ってきたようだ。
今でも、谷の中では岩が削られ、崖も崩れ、活発に地形は変化している。

氷による侵食と水による侵食のコラボレーションが生み出す、岩の造形。
そうした地形が、スイスアルプスには数多ある。

2009/08/03

氷と岩 - Murtèl rock glacier, Switzerland


大昔に山に降り積もった雪が、悠久の時を経て流れ下るものを氷河という。

一方、「岩石氷河」というのは、氷河とは異なり、氷ではなく「岩」が主役だ。

山の斜面を埋める落石。この内部には、夏でも融けない氷が隠れており、それは徐々に動いて岩とともに斜面を下る。
とくにここは北向きの斜面。陽が当らず、真夏でも雪が残っている。
スイスアルプスの山の上。





岩の塊の上に立つと、その大きさに改めて驚く。
これらの岩は、年間数センチ〜数メートルといった速さで斜面を徐々に下る。
全体として舌状の地形を呈しながら、先端部の岩々は動きを止め、表面には皺が寄る。
目に見えない、しかし実は見えている——少なくともそのスナップショットは——地面の動き。

そしてそれ以上に速いのが気候の変化。
ギザギザの山のてっぺんは、いつかまた氷河に覆われてしまうのだろうか。

2009/07/22

砂の島 - Fraser Island - Queensland, Australia

大陸の岩盤は長年の侵食により、やがて砂となり川で海へと運ばれる。
海へ吐き出された砂は、今度は波によって海岸沿いにその居場所を振り分けられる。

そうして運ばれた砂が溜まりに溜まって、巨大な島となったのが、オーストラリア東岸のフレーザー島だ。
砂の島としては、世界でいちばん大きい。

通常、砂嘴(さし)と言えば、河口の辺りに数百メートル、あるいはせいぜい数キロメートル程度に渡って延びた砂の堆積する場所のことを言う。
それに比べると、この砂島の規模は100kmを超え、とてつもなく大きい。飛行機からでも、その全体像は望めないだろう。

どれだけ大量の砂が、どれだけの時間をかけて溜まり、この島を形成したのだろうか。

ちなみにこの島はグレート・サンディ国立公園として世界遺産に登録されている。
このネーミングは、日本語訳で「壮大な砂の公園」、とでもなるだろうか。
なかなかわかりやすくて良いかもしれない。

2009/07/18

波は岩を削る。 - Great Ocean Road - Victoria, Australia

オーストラリア南岸に、グレート・オーシャン・ロードと呼ばれる海沿いの道がある。
かつて第一次世界大戦の帰還兵のための公共事業として造られたというが、今はヴィクトリア州でも有数の観光スポットとなっている。

海沿いには、所々に砂のビーチを挟みつつ、岩の崖が延々と続く。
海に面した崖は海食崖と呼ばれ、波の当たる部分、つまり海水面の高さ付近が凹んでいることがよくある。
このノッチと呼ばれる凹みは、長い間その部分に波が繰り返しぶつかり、徐々に岩が削られてきたことの結果だ。

崖の岩は、石灰岩(サンゴ礁起源と思われる)や砂岩、泥岩などがほぼ水平に、交互に積み重なってできている。
コンクリートのようにガチガチでもなく、比較的削られやすい。

この日は波も穏やかだったが、サーフィンのメッカともいわれるこの場所では、それなりに強い波がそこそこの頻度でやってくるのだろう。
すると、崖が削られる速さもそれほど遅くもないのかもしれない。
たとえば100年後には、海岸の岩が何メートルか削られ、海岸線が変わっているのかも。

地形の変化は、それだけ急速だったり、もっと緩やかだったり、予測は難しいものなのだが。

2009/07/02

景色を見て、チケイを考える ~このサイトについて~

海へ行こう、山へ行こう・・・
そんなときに意識して人が見ようとするもの。
風景。
その中に、必ずと言っていいほど隠れている。
いや、隠れてはいない。
堂々とそこにある。

地面。

足元を見る。遥か遠くに連なる山の頂を見渡す。
それは途切れることなく、どこまでも続いている。
そして時に、地面は我々の目前に立ち上がり、荘厳な景観として人々を圧倒する。

チケイ。

街中にだって、それは見つけられる。
海の底にだって。
地下にも埋まっているかもしれない。
さすがに空には浮いていないが、でも空を動かしているのは、実は地面だ。

地面は、さまざまなカタチで現れる。
それがチケイ。

ただ眺めているだけでは、それは一瞬の景色に終わる。記憶とともに消える。

感性でみる。それもいい。
絵に描き、感動を紙と絵の具に託して残す。
スイスの画家、セガンティーニはそうして山に生きた。

カメラも強力なツールだ。
シャッターを切って、目前の景色を永久保存。

また違う見方もある。
理性でみるとどうなるか。

なぜその地面はそんなカタチをしているのか?
いつからそこにあるのか?
何でできているのか?

ちょっとでも踏み込むと、ハテナの数はかぞえきれない。
そのひとつひとつに答えを出すのは、容易ではないだろう。

それでも、理性でチケイを紐解くことはできる。
証拠と理屈を掻き集めて、合理的な物語を構築する。
チケイの科学はそうやって発展してきた。

ただ、チケイ学者達の脳内に収まっているだけでは、もったいない。
地球表層の長編推理小説。
その片鱗だけでも、覗ける窓を設置してみよう。

レンズは目の代わりに。
キーボードは口の代わりに。

大地の素顔をご紹介しましょう。