密集する建物や舗装された道路に隠されるも、都市部の地形は、注意深く観察すればその足下に「ある」ことがわかる。
2007年に開業した東京ミッドタウン。ここには東京で一番高いビル、ミッドタウン・タワーがある。
地形(標高段彩+陰影+斜面傾斜の色づけ)を地図に重ねて見ると、六本木の周辺は、複雑に谷が入り組んでいる場所だというのがわかると思う。
数ある谷のうちの一つ、北東向きの小さな谷の谷頭部にミッドタウンは位置している。つまり、台地の尾根と谷との境目だ。だから谷に面している北側には、地下1階でも地に面した出口がある。
そしてその先には、昔の湧き水の名残である池があり、かつてはここが小川の始まりとなっていた。
ちなみに六本木ヒルズも同様で、南東向きの谷の頭部にあり、その谷側には池もある。
その名の通り、ヒルズは丘の上(ぎりぎり)に立っている。
さて、ミッドタウンを入り口から見て行こう。
ミッドタウンの正面。よく見ると、地面がこのあたりで道路側に傾斜し始めている。分水界のようになっているのだ。
ここからまっすぐ、1階を進む。
途中の商業施設は通過して、そのまままっすぐ行くと、渡り廊下に出る。横にはリッツカールトンのエントランス(「地下1階」だが、ここではもう地下ではない)が見える。
渡り廊下の突き当たりの先には、檜町(ひのきちょう)公園が見える。
ミッドタウン北東の檜町公園は、谷の始まりである。谷底は地面が低くなっているのと、高い建物が少ないために、視界が開ける。
渡り廊下から地面に降り、公園に入る。振り返ると、ミッドタウン・タワーの足下から水が湧き出しているのが見える。
公園内はよく整備され、水も豊富に流れている。ただし、この水はもともとの湧水ではなく、浄化した水を循環させているようだ。(都市化のために、東京都区部の湧水はどこもかなり少なくなっている。ここも水に触れてみると暖かく、自然の湧水そのものでないことはすぐに分かる。)
整備された空間ではあるが、水が流れているというだけでも雰囲気は感じられる。
もともとは武家屋敷の敷地で、当時から池は作られていたのだろう。
ともあれ、大商業施設のすぐ裏にこのような公園があるというのも、東京の魅力のひとつではないだろうか。
谷はこの先も続き、かつては新橋の方へ流れる川があった。
現在そういった川は、埋められたり、道路や建物に置き換わって、その跡をみつけるのは容易ではない。
しかし、谷という地形は変わらずに残っている。
東京一高いビルの足下は、小さな川の始まる場所だったのだ。